スギナ

スギナは根が深い。長いもので1メートルはある。放っておくと庭中に生えるので、毎日のように掘ってはむしっている。殆どは掘り切れず、途中で根が切れてしまう。切れたところからしぶとく生えてくるので、できるだけ長く掘り上げたい。

昨日は風が強かった。集めたスギナが飛びそうで、大きな石を入れたゴミ袋に放り込んでいた。

掘り始めて1時間くらいだろうか。そろそろやめようかと思ったとき、どうしても掘り切れないスギナに当たった。いつもなら切れてしまいそうなところで切れない。これは相当長く掘れるのではないか。スギナ掘りには縁日の型抜きのような楽しさがあって、綺麗につながったまま引っこ抜けたときはかなりの達成感がある。

どこまで行くのかワクワクしながら掘っていくと、やがて隣の家の垣根まで来てしまった。この下も掘っていいものだろうか。垣根を越えたら駄目だろう。でも、スコップの届く範囲で掘るぐらいなら、許してもらえるのではないか。

好奇心と後ろめたさを半々に感じながらスコップを差し入れた。垣根の椿の葉が顔に当たるのも構わず、慎重に作業する。

流石に木の根が邪魔をして、掘れる場所がなくなってきた。ここらが諦め時だろう。ちぎるつもりで引き抜こうとしたが、なかなか抜けない。いつもはすぐに切れてしまう癖に、こいつはやたらにしぶとい。スコップの刃で切ってしまおうとしたが、変に弾力があってうまく切れない。

なんとなく蛸の脚を連想した。ぶにょぶにょしていて、よく研げた包丁でないと刃が入らない。

そう思った途端、突然根がビクンと動いた。吃驚してスコップを取り落とした。根はしばらく震えていたが、やがてするすると地面に潜り始めた。

スギナの全身が潜ってしまってから、いつの間にか随分経ったらしい。気が付くと風が止んでいた。見ると、袋に入れておいたスギナも、みんなどこかへ行ってしまった。